微調整の残っていたBetrayer第六章は何とかup出来ましたが…。
キリリク製作前に、リハビリで思いつく限りのギャグネタでも書いてみるかな…?
MLとELのちとせルートやりなおしてこようかな…。
それと、関係ないですが六章で書ききれなかったルーウィンの火傷痕にまつわることを小話感覚で下に載せてみます。
~火傷痕の戒め~
火傷痕が酷く疼く。
二年前に負ったこの火傷痕は、自らの甘い部分への戒め。
とある寒い冬の日に彼はこの火傷を負った。
平民地区の一角で起きた、火事。家が一棟全焼したが、幸いなことに死者は居なかった。
中に取り残された赤ん坊を助けたのは、白い髪の青年だった。その青年はその際に、首筋に火傷を負った。
それは、普通は名誉の負傷と称えられるものであるはずだった。
でも期待なんて…していなかったはずだった。
「アンタが行ったせいで、この子が怪我をしたのよ!!」
していなかった…。
「お前じゃなくて、俺が行ってれば無傷で助けられたはずだ!!」
していなかった…はずなのに…どうして…こんなに苦しいんだ…?
勝手なことを言うな。元からその赤ん坊は火傷をしていた。
それに逃げるときにその子を連れて逃げなかったのは、誰だ? おれが焼けている家の中に突っ込んだとき、外でずっとおろおろしていたのは、誰だ?
痛みを和らげるために、心の中だけで悪態を吐く。
もう慣れたことだった。物心ついた時から、そうだった。何かあれば、すぐに自分のせいにされる。
とても最悪なサイクル。しかも逃げ出せないのがタチが悪い。
誰かの手助けをしたって、恩を仇で返されるだけ。ずっと前に、そう学んだ。
だから誰かが困っていても、手を差し伸べなかった。
なのに、どうして今はこんな行動を取ったのだろうか?
「まったく…あんな奴がいるせいで、ここ二十年くらい悪いことばかり起きる…」
「でも仮にも騎士でしょう? どうしてあんな忌み子が騎士になれたのかしら?」
「気まぐれだよ、気まぐれ。この五年、陛下の気まぐれだけで首が飛ばずに済んだんだって」
「なら何時首が飛ぶのかしらね? あ、もちろん、本物の首が、よ?」
「そうだな…、ま、そのうち奴の首がさらし者にされる日が来るって」
「我々セルダールの人間は悪魔の存在を許しません、ってな。ははは、ちょうどいいアピールじゃないか」
今も、ふざけた誹謗中傷は聞こえてくる。
助けなければ、よかった。そうすれば、あんな耳障りなノイズは聞かずに済んだはず。
耳を塞いでも、ずっと、ずっと聞こえてくる、うざったいノイズ。
火傷を負った首が、異様に熱く、痛く感じられた。
その時、まともに医者に見せなかったせいで、火傷痕は残ってしまった。
だが、彼自身は残ってよかったと思っている。
鏡でも使わねば見えぬ場所にあるけれど、それは自分を固く戒める証。
他人のために自ら行動するな。恩を仇で返されるだけだ。
だが…それと同時に固く誓いなおしたこともあった。
どれほど強い殺意を抱こうと…決して人を殺めるな、と。
あの時覚えた殺意を消すため…隠すために、ひたすらにその誓いを心の中で呟き続ける。
いずれ、その誓いを破ることになるのは…そう遠くないこととも知らずに。